「頭蓋閉鎖[縫合]不全[症]:cranial dysraphism]

ご心配なことと存じます。
「新生児仮死で生まれたものの現在の所元気に育っております。」
との事です。
本当に宜しかったですね。

けれども
この御相談者の御記載内容が正しければ
「頭蓋閉鎖[縫合]不全[症]:cranial dysraphism]
の可能性が御座います。

通常はお誕生と同時に「診断」がつくはずのものなのです。

頭部の「髄膜瘤:ずいまくりゅう」についての御相談で御座います。
うまくご説明できるとよろしいのですが。


#1
##1
「生後10ヶ月の息子について相談させて下さい。
生まれた時から泣くと眉間の間が膨れて瘤のようになります。
先日小児科の先生から気になるので脳外科で診て貰うように言われました。
普段は平らで全く目立ちません。只、眉間にシワを寄せる表情をする時、
泣く時にポコンと膨らみます。
瘤は緊満しているものの柔らかで拍動性はありません。
髄膜瘤ではないかと小児科の先生から言われ大変不安になっています。
ネットで調べると脊髄の髄膜瘤に関しての記載は多くあるのですが
頭部の髄膜瘤に関しては殆ど情報がありません。
そこで御相談致したい事がいくつかあります。

1、髄膜瘤の可能性がやはり高いのでしょうか?
2、そうであれば今後予後はどういった経過をたどる事が
  多いのでしょうか?
3、手術の可能性はありますか?
4、今後の子供の発育に障害が起きる危険性はありますか?

早産、新生児仮死で生まれたものの現在の所元気に育っております。
お忙しい中大変恐縮です。どうぞ宜しくお願い致します。」

との事です。



#2
##1
脊椎に「髄膜瘤:ずいまくりゅう」が発生する場合
「脳神経外科専門医」は
「潜在性2分脊椎:spina bifida occluta:SBO」と
「嚢胞性2分脊椎:spina bifida cystica:SBC」と「瘤」よりも
「瘤」が発生している「分断状態」から「病態」を考えます。

##2
これらは広く「中枢神経系」の「閉鎖[縫合]不全[症]]という「病態」で
考えます。

##3
妊娠早期「胎生第4週」で決まります。

##4
脊椎では「嚢胞性2分脊椎:spina bifida cystica:SBC」が
「「髄膜瘤:ずいまくりゅう」に相当致します。



#3
##1
頭部の場合の「閉鎖[縫合]不全[症]]は脊椎と基本的には
同様で御座います。
頭部の場合広く「頭蓋閉鎖[縫合]不全[症]:cranial dysraphism]と
呼称致します。

##2
##1ですが「頭蓋閉鎖[縫合]不全[症]:cranial dysraphism]は
頻度はずっと脊椎よりは少ないものです。


##3
「頭蓋骨」や「頭蓋底」のどこにも発生致しますが
最も頻度の高いのは「後頭部正中線上」です(Czechら:1995)。

##4
最も「軽症」の「病態」が「潜在性2分頭蓋:cranium bifidum occultum」
最も「重症」の「病態」が「無脳症:anencephaly」という「病態」。

##6
「無脳症:anencephaly」の場合は皮膚も頭蓋骨も硬膜も「欠損」して
「脳組織」が直接「「露出」しているものであり「脳組織」が「ない」わけでは
御座いません。

##7
##4の「潜在性2分頭蓋:cranium bifidum occultum」から
「無脳症:anencephaly」という「両極端」の間に様々な
「頭蓋閉鎖[縫合]不全[症]:cranial dysraphism]があり
御相談者はこの「病態」を「髄膜瘤:ずいまくりゅう」として
御相談されているものと存じます。


#4
##1
「頭蓋閉鎖[縫合]不全[症]:cranial dysraphism]の様々な「病態」
には「5種類」御座います。
この御説明は省略いたします。

###1
「頭蓋髄膜瘤:ずがいずいまくりゅう:cranial meningocele」
###2
「脳瘤:のうりゅう:encephalocele」
###3
「脳髄膜瘤:のうずいまくりゅう:encephalumeningocele」
###4
「脳嚢胞瘤:のうのうほうりゅう:encephalocytocele」
###5
「脳脳嚢髄膜瘤:のうのうほうずいまくりゅう:encephalocystomeningocele」

##2
「頭蓋閉鎖[縫合]不全[症]:cranial dysraphism]の
俗言う「髄膜瘤:ずいまくりゅう」には以上の「5つ」の「病態」
が御座います。

##3
「外見」「概観」からの以上の
「頭蓋閉鎖[縫合]不全[症]:cranial dysraphism]
を鑑別することは全く不可能で御座います。

##4
「頭蓋閉鎖[縫合]不全[症]:cranial dysraphism]で
眉間の間に発生する「病態」は5%で御座います。
因みに「後頭部」は74%で御座います。

##5
これらの頭部「髄膜瘤:ずいまくりゅう」の「診断」は
頭部X線撮影+脳CTにて鑑別「診断」を致します。

##6
「臨床神経診断学」的には何も「症状・症候」は起こしません。

##7
但し御考えいただければすぐにわかりますが「中身」が外界と
交通したら=「破裂したら」大変なことになります。

##8
「脳神経外科専門医」による手術にて「治療」致します。
嚢胞が破裂して「生まれる」ことも多く「出産」と同時に
手術になることも御座います。

##9
##8より「麻酔科専門医」「産婦人科専門医」
「小児科専門医」「脳神経外科専門医」
が同時に「分娩」=「多くは帝王切開」にあわせて「チーム」を
くんで「泊り込み」になります。

##10
たとえ「瘤」がはれつしていなくても・しそうでなくても
ご両親の気持ちを考えて分娩と同時に手術になります。





#5結論:
##1
「1、髄膜瘤の可能性がやはり高いのでしょうか?」
=>
「高い」というか
「頭蓋閉鎖[縫合]不全[症]:cranial dysraphism]であろう
と今の私は考えます。

頭部X線撮影及び脳CTを撮影しなければ確定診断はできません。

10ヶ月「経過観察」されたのが「奇跡」です。

##2
2、そうであれば今後予後はどういった経過をたどる事が
  多いのでしょうか?
=>
「臨床神経診断学」に「症状・症候」は何もでませんが
ご両親が「「頭蓋閉鎖[縫合]不全[症]:cranial dysraphism]
の場合は大変「苦しまれる」ので超早期に手術を致します。

##3
3、手術の可能性はありますか?
=>
御座います。

##4
4、今後の子供の発育に障害が起きる危険性はありますか?
=>
ありえないないと今の私は考えます。

但し御相談者の御記載内容通りであるとしたら
もっともっと早くに通常は対応されるものであり
10ヶ月の現在生下時手術から10ヶ月経過されすくすくと
生長されているはず。



上記あくまでもご参考にまでお留めおき
ご無事にお大事にされて下さいませ。



何卒にお大事にされてお健やかにされてくださいませ。




何卒にお大事にされてお健やかにされてくださいませ。

[2004年6月24日 10時24分8秒]


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お名前: kazumi   
生後10ヶ月の息子について相談させて下さい。
生まれた時から泣くと眉間の間が膨れて瘤のようになります。
先日小児科の先生から気になるので脳外科で診て貰うように言われました。
普段は平らで全く目立ちません。只、眉間にシワを寄せる表情をする時、
泣く時にポコンと膨らみます。
瘤は緊満しているものの柔らかで拍動性はありません。
髄膜瘤ではないかと小児科の先生から言われ大変不安になっています。
ネットで調べると脊髄の髄膜瘤に関しての記載は多くあるのですが
頭部の髄膜瘤に関しては殆ど情報がありません。
そこで御相談致したい事がいくつかあります。

1、髄膜瘤の可能性がやはり高いのでしょうか?
2、そうであれば今後予後はどういった経過をたどる事が
  多いのでしょうか?
3、手術の可能性はありますか?
4、今後の子供の発育に障害が起きる危険性はありますか?

早産、新生児仮死で生まれたものの現在の所元気に育っております。
お忙しい中大変恐縮です。どうぞ宜しくお願い致します。

[2004年6月23日 23時37分24秒]
by mmdmsci | 2004-06-24 14:51 | 先天奇形


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